肉用牛環境対応生産拡大基盤技術普及事業

肉用牛環境対応収益性向上管理技術普及事業

JRA日本中央競馬会 特別振興資金助成事業

飼養管理マニュアル

2.飼養管理-分娩管理・新生子管理


ポイント

事故多発時期、分娩準備と分娩予知、分娩の立ち会いで事故防止
難産は母子ともに疲労、その後の繁殖、発育に影響

分娩の準備

予定日、前回分娩時の状況を確認し、分娩房の準備と移動、介助器材、保温器材の準備をはじめます

妊娠期間は母牛、種雄牛、栄養状態にも左右され、現在では285~290日で、1週程度前後します。

分娩房は新生子の疾病予防もあり清掃・消毒して、乾燥敷料を入れ、2週間前までには移動させ馴致させます。
子牛は寒さに弱いので冬季は保温器材も準備します。

分娩時の処置用に介助器材、拭取り用タオル、消毒薬、人工初乳、ビタミン剤などを準備します。

画像は酪農学園大提供





分娩予知、ICT機器活用

予定日の1週間前から兆候を観察(ICT機器も活用)し、分娩の兆候があれば立ち会いの準備をします

■ 分娩時間経過(後産まで)とICT機器のの活用

  • 分娩1~2日前
    外陰部からかたい粘液、その後次第に柔らかくなる
  • 分娩2日前頃から
    体温が低下し、分娩前日には著しく低下
  • 分娩当日
    尾の付け根の周りがくぼみ、尾を上げる動作、分娩房内を歩き回る

陣痛開始:寝起き増加、いきみ-30~60分 第一破水(尿膜)-30分 足胞出現-10分 第2次破水(羊膜)-20~30分 分娩-4時間 後産排出



ICT機器を利用した分娩検知には、センサーを膣内に挿入し分娩前の体温の低下、破水時排出された際の温度変化検知するもの、分娩前の行動変化(移動距離、姿勢の変更など)をカメラで捉えて検知するものがあり、パソコンやスマートフォンに分娩が近いことを知らせます。





分娩介助・往診依頼

可能な限り立ち会い、二次破水したら胎位を確認、つなぎが出てきたらいきみに合わせて牽引します。
出血があったり分娩が進まない場合は獣医師に連絡します。


肉用牛の出生時の体重は大きくなってきており、難産では母子ともに疲労、産子のその後の発育にも影響します。

介助(けん引)はつなぎが出てきてから。分娩が正常に進まない場合は胎位を確認整復。膣内に手を入れる際は手袋を着用し外陰部周辺、手指、腕をしっかり消毒します。

岩手県肉用牛飼養管理マニュアル(R4)から


いつもと様子が違うとき、出血がある時(へその緒の切断、胎盤剥離の疑い)はすぐに、逆子など胎位の整復が困難な場合は獣医師に連絡、相談します。


■ 異常分娩の兆候

  • 陣痛がはじまって6時間経っても破水しない
  • 一次破水後1時間経っても足胞が出ない
  • 足胞が出た後1時間(初産牛で2時間)しても生まれない
  • 生まれる前に出血した

→ 過大子、逆子、産道狭窄、陣痛微弱、早期胎盤剥離、子宮捻転、低下カルシウム血症、多胎などの可能性


分娩後の処置

子牛は、気道の確保、へその緒の消毒をし、母牛に舐めさせたり、タオルなどでよく拭いて体温低下に注意します。
母牛は、外陰部周辺はや乳房を消毒、ビタミン剤などので栄養補給をし、その後後産の排出を確認し廃棄します。
子牛には分娩後6時間以内には清潔な初乳を給与します。


子牛の気道確保では、鼻、口周りの粘液を拭き取り、呼吸していない場合は台の上で子牛を伏臥位(“伏せ”の状態)にし、頭だけ台からずらして下に向かせるという方法や人工呼吸器キットを利用します。

へその緒は希ヨード剤で消毒。長ければ5cmほどで切除します。

母牛が子牛を舐めるリッキングは強いマッサージ効果があり、排糞、排尿、呼吸、血行を促進し、初乳の吸収率も高まります。

リッキングやタオルなどで拭いて子牛の体を乾かし、体温が低下しないよう注意します。

母牛には栄養補給としてビタミン剤、味噌湯などを給与。分娩後1~6時間では排出される後産を廃棄、24時間たっても後産が排出されないときは獣医師に相談します。

良質、清潔な初乳を哺乳欲を待って感染への抵抗性をつける免疫グロブリンが吸収されやすい分娩後6時間以内に2~4ℓ給与します。
羊水を飲んで哺乳欲のない状態では十分に吸収されません。
初乳が出ない、初乳摂取が十分でない場合は市販の人工初乳や清潔に採取し凍結保存した初乳(感染症防止のため60℃30分加温)利用します。
哺乳欲がない場合はストマックチューブを使うか獣医師に相談しましょう。